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「しょっちゅうテレビの取材を受けて、あれじゃ社長業に専念する時間がないのでは?」「ホリエモンは本当は暇なんだろうか?」と感じた人もいるはずだ。 H社長だけではない。
同じインターネット企業で言えば、RのM社長やSのS社長などもそうだ。 頻繁に社外に出かけ、財界の要人などさまざまな人に会ったり、マスコミの取材を受けたり、あるいは社交界に登場して話題を集めたりと、びっくりするほど多忙な生活を送っている。
しかし彼らの本業は、社長業のはず。 いったいどうやって、社内で社長業に専念する時間を捻出しているのだろう?答は簡単だ。
優秀な経営者は、実務を持っていないから、ある程度、時間の拘束から自由でいられるのだ。 さらにいえば、机にへばりついていなくても、社長の仕事はこなすことができるのである。

経営者の本来の仕事は、実務に携わることではない。 前にも述べたが、社長の第一の仕事は会社の長期戦略を立てていくというビジョンメイキングである。
そして第二に、企業外交を行うために社外に積極的に出ていくことも、重要な任務となっている。 もちろん社内の案件の最終的な決定には、社長は携わらなければならない。
重要な経営会議には出席しなければならないし、また役員会や株主総会なども社長業の重要な仕事のひとつである。 だが会社経営を日々こなしていくうえで、実際に会社のリーダーシップを支えていっているのは、実は社長ではなく、経営チ−ムであることが多い。
経営チ−ムに入っている役員や執行役員、事業本部長などの経営メンバーたちの意志の総体や決断の積み重ねが、足し算となって最終的な会社の舵取りに?ながっているのである。 中には、こうした日々の経営判断を経営チ−ムにゆだねず、経営者がみずから司っている会社もあるだろう。
経営者がそんなふうに会社の実務に執着し、社内にしがみついているような企業は、たしかに手堅くはある。 経営メンバーの力量にはばらつきがあるかも知れないし、経験の豊かな社長が実務の面倒を見た方が安心感があるケ−スもあるだろう。
しかしそうした企業は一方で、あまり魅力がない。 持続する成長も期待できない。
輝くような将来性に乏しいのである。 私がこれまで会ってきた数多くのベンチャー企業の経営者を思い返してみても、そのことは明らかだと思う。
ある程度権力を分散し、社長にフリ−ハンドな行動の自由を残しつつ、現場の経営判断は経営チ−ムが担う。 そんなスタイルの会社が、最終的には成功を収めているケースが多いのだ。
会社を起こした直後は社員数も少ないから、経営者と経営チ−ムの分散ということはさほど問題にはならないかも知れない。 だが会社がある程度の成長軌道に乗り、いよいよ新規株式公開(IPO)という段階にもなってくると、社長が自由に動き回れる環境を作っておき、実際の現場のリーダーシップは経営メンバーがその場その場で支えていくようにすることが、基本的なスタイルとして必要である。
継続して成功し続ける企業で最も大切なのは、経営者が強いリーダーシップを発揮することではない。 そうではなく、経営チ−ムが現場で強いリーダーシップを発揮することによって、会社がきちんと支えられていくことである。

では経営メンバーは、具体的にはどのようにして会社を支えているのだろうか。 ひとつ興味深いたとえ話をしてみよう。
成長軌道に乗っているある巨大レストランがあって、その企業では経営者の下に三つの役割を担う三人の経営メンバーがそろっている。 そして数十人のシェフやホ−ルスタッフたちが、経営メンバーの下でレストランを動かしている。
もしその屈の中でインフルエンザが流行し、経営者と三人の経営メンバーが急に入院してしまい、出社できなくなったらどうなるだろう。 あなたの勤務先を思い浮かべながら、想像してみてほしい。
会社はいきなり倒産してしまう?いやいや、そんなことはないはずだ。 経営者や経営メンバーがいなくなったとしても、すぐに会社のオペレーションが止まってしまうようなことはないだろう。
経営者や経営メンバーがいなくなっても、シェフはいつものように仕入れ先から食材を仕入れ、これまで通りの料理を作り続ければいいし、ホールスタッフはいつものようににこやかに接客し、シェフの作った料理を客に運べばいい。 一週間や二週間、あるいは数か月にわたって経営陣がいなくとも、さほど困ることはないだろう。
お客さんが来てくれる限り、きちんと毎日日銭を稼ぐことができるから、会社のオペレーションが止まる心配はない。 しかし逆に、経営者と経営メンバーはインフルエンザに感染せず元気に出社しているが、シェフやホ−ルスタッフなどの従業員が全員倒れて出社できなくなってしまったら、どうなるだろう。
いきなりレストランはオペレーションが止まってしまう。 料理を作る人も、それを運ぶ人もいないから、店は開けておくことができない。

当然のように日銭も入ってこなくなり、そうした状況が数週間、さらに数か月も続けば、レストランはあっという間に倒産してしまうはずだ。 日々の売上を支えているのは、現場の従業員たちなのである。
別のたとえをすれば、それは大きな船の機関部のようなものでもある。 エンジンが止まって機関が停止してしまうと、どんなに船長(経営者)が必死になっても、船はテコでも動かない。
逆に船長が急にいなくなったとしても、機関部が元気なら、船はとりあえずは前に進んでいく。 だからいまというこの瞬間を切り取れば、現場の従業員の方がずっと重要な役割を果たしているということができる。
では経営者や経営メンバーという存在は、会社の中でどのような意味を持っているのだろうか。 それは私の考えでは、「時間軸」である。
経営者の決断したビジョンは、五年後や十年後になって意味を持ってくる。 もう少し現場に近いレベルで経営判断をしている経営メンバーであれば、彼らの決断は一年後、三年後に影響を与えるようになるといえるかもしれない。
先にたとえ話をした巨大レストランで言えば、いま経営者と経営メンバーがいなくなっても、レストランの運営には大きな影響を与えない。 だがこのレストランが今後、どのようなメニュー展開を行い、あるいは支店をどう出していくのかという経営的な判断は、長期的にはレストランの経営に大きな影響を持つ。
また船の話で言えば、船長がいなくなっても、船はもちろん動き続ける。 だが、「前方に大きな台風があるようだから、うまく避けて通ろう」「そろそろ水と食糧の備蓄が減ってきているから、来週はあの港に寄港しよう」という船長の判断がなければ、船は難破してしまう危険性があるし、あるいは乗組員が飢えに苦しめられる羽目にもなりかねない。
再度、説明しておこう。 いま現在の瞬間に影響を与えるのが、現場の従業員。

長い時間軸の中で、将来に大きな影響を与えるのが、経営者と経宮メンバー。 その役割分担を、よく理解しておいてほしい。
時間軸の重みが、企業の勝敗を分ける私がRで、事業部門の責任者を務めていた時、経営メンバーのひとりである上司がよく言っていたことがある。 「私の仕事は、事業の道筋を決めること。